羽毛ふとんの仕立て直しのいろいろ

羽毛ふとんの仕立て直しを始めて、今年で21年目になります。

始めた当初はぜんぜん認知度が低くて誰も知らない感じでしたので、チラシを折り込んでもまったくお客さんからの連絡はありませんでした。

 

問屋さんの会合に行けば同業者の年上の方から「羽毛ふとんを仕立て直しなんかしゃダメだ!!」「仕立て直しなんかしないで新品売らんきゃダメだ!!」と、酔った席で説教をくらう始末でした。(その方なりの理屈が合ったんでしょうが、なかなか厳しい意見でした。)

 

あれから20年以上が経って、羽毛ふとんの仕立て直しも一般的なサービスになってきました。

寝具店ばかりでなくクリーニング屋さんも取次ぎをしていますし、今の時代はインターネットでもたくさん業者さんが宣伝をしています。

 

「一生もの」、「お手入れ要らず」といったセールストークで売られていた羽毛ふとんが実は定期的なお手入れが必要で、最適なお手入れをすれば長く使える品物であるということが広く知れ渡ることはとってもいい事だと思います。

 

ただ、いろんな業者さんが「羽毛ふとんの仕立て直し」を取り扱う現状は一昔前、いや二昔前の『木綿わたの仕立て直し』の状況に似ています。

 

それぞれの家庭で行うものだった木綿わたの仕立て直し(お手入れ)を綿屋が引き受けるようになって、そのうちに呉服屋さんや洋品屋さんも取り次ぐようになって、農協さんも行うようになっていきました。

 

〝綿屋〟が布団の仕立て直しを行うようになって〝布団屋〟になっていくわけですが、町の綿屋が引き受けていた分にはお客さんの顔もわかるし、注文から仕立て上がりの工程まで一貫して行うことが出来たので個別管理が徹底していましたし、それぞれの綿の状態で打ち直しや綿入れの仕上げ具合を調整できました。

 

それが、だんだんと取次ぎだけのお店が多くなって、仕立て直しの作業は別の業者がまとめて行うようになると、中身の綿が混ざるんじゃないかといった噂が広がりました。

 

当時の木綿わたといえば各家庭の女性(おばあちゃんやお母さん)の宝物でしたので、そんな噂が広がると仕上がってきた布団や余り綿を厳しくチェックしてきちんと自分の綿が入っているか目を光らせていたものでした。

 

現在の羽毛ふとんの仕立て直しの状況も似た感じです。

 

多くのお店が、お客さんの持ってきた羽毛ふとんを預かって後は仕立て業者に送るだけ、中には羽毛ふとんの診断もしないで、仕立て直しの金額を決めて預かるお店もあるとか聞きます。インターネットの場合だとほとんどこの感じですね。

 

この状況、どうなのかな~と思います。

なんでこんなことを書いてるかというと、今朝仕上げた羽毛ふとんの中身、ダウンの状態がすごく良かったからなんです。いや、正確には良くなってきたからなんです。

 

「いい感じです。ダウンの状態」

「それぞれのダウンの羽枝がいい感じです。わかりますかね?」

写真のダウンですが、預かった時には結構くたびれていた状態でした。

でも仕立て直しの工程の一つ『プレミアムダウンウォッシュ加工』で洗浄してきたら、すごくダウンの状態が良くなって戻ってきたんです。

そうなると最初の見立てよりも、この状態のよくなったダウンを活かした仕立て直しへの変更が現場で必要になるわけです。

 羽毛の状態を判断して一枚一枚きちんと状態に合わせて仕上げることが、仕立て直しの本来の姿、布団職人の心意気だと今朝しみじみと感じたんです。

 

羽毛ふとんの場合は洗浄後の状態は洗ってみないと正確には分かりません。でも、洗浄後の状態を見て判断することは外注に加工を任せている場合は無理だと思うんです。

なぜかというと、物理的に考えても1シーズンに何百枚と仕立て直しを請け負っている場合、その都度一枚一枚状態を見て発注元のお店に連絡を取って判断を仰ぐことは不可能だからです。

 

そう考えると羽毛ふとんの仕立て直しも木綿わたの仕立て直し同様、一枚一枚その布団の状態にあった的確な仕上がりをするには、やはり預かったお店で最終仕上げ、羽毛ふとんの場合は最後の羽毛の吹き込みを出来ることが必要なんだなと実感したわけです。

 

全国には「羽毛の吹き込み」という仕立て直しの最終仕上げを行っているお店が結構ありますが、志なのやもその中の一軒としてこれからも〝布団職人魂〟で羽毛ふとんの仕立て直しを行っていこうと決意を新たにした朝でした。